短歌 29年


       立冬や歌会始めに応募する姿
 吾子に語る父の命日    ストーブに載せたる焼き芋
大きすぎと思えどいつしか腹に入る    双子座の流星群を見たしと思い
 ベランダに出るも三分も居られず    サンタさんずーっと前から知ってたよ
 中二の孫のイブの告白  
                     

若き日に母に投げたる言葉悔ゆ
 今朝の食事に髪の毛見つけて    中国語もっと話したいと言いし孫
 人見知りせず異国で遊ぶ     柿買ひてビタミンCか血糖値
 どちらに重きを置いて食すか    
ゴルフ場伐採進みいよいよか
 道路拡幅聞いて三十年     肉詰めて炒めしアケビほろ苦く 
  喜ぶ夫の顔眼に浮かぶ
   

     フェスブック友の名前は見当たらず
  甥姪 子の友あまた見つける  
 築三十年住まいは我とともに老い
家電の買い替え修理相次ぐ    入道雲庭のトンボや蝉の声
風景なつかし遠き夏の日    九十になっても心は娘のままと
言いし母よ七十の今分かる    孫の作りし台湾思い出帖
記録に感服我も見習う    肌の色目の色たがえど
美女揃い 世界陸上美も競う    八月の長雨記録 四十年前の
吾子の生まれし年甦り      

  新川の花火終われば

  夏休み残り少なく

   宿題追わるる

巣立ちゆく子等の残した机に向かい
 血圧測り孫に文書く    昼休みどっと繰り出すサラリーマン
 主婦は遠慮してランチ入れず     「お母さん」娘の声にはっとして
 目覚めて見廻しやっぱりひとり    冷凍庫期限間近のカキ見つけ
 季節外れの蠣フライとなる    被災者に膝つき見舞われる
 陛下に感動と警備の夫帰る   芝大門亡夫が定年迎えし地
 聞き覚えあるビル仰ぎて歩く 
                     
   外来種生態系を変えると聞いて
 庭のハコベも愛しく思える     独り身の我が世の春を謳歌する
 二十四時間思いのままに    弟が孫を連れて庭仕事
 十歳の男(おのこ)立派な弟子なり    弟は季節折々訪ね来る
 独り暮らしの姉を案じて    東慶寺イワガラミ咲きしのニュース見て
 どんな花やら見に行きたし    幕張で見かけた力士は阿武咲
 テレビを見て四股名覚える                
   友よりの孔雀サボテン

 今朝咲きぬ

三十年の生命つないで
夫植えしアマリリス咲き

 思うこと

送る術あれば写真みせたし

孫抱けば怪訝な顔で吾を見つめ
すぐ反り返り親を探せし                   土浦の街の映像しばし見入る
 我が青春を過ごせしところ  
   アマリリスふたとせぶりに

つぼみ持ち

心弾ませ開花待つ日々    満天星の茂れる頃は

剪定する夫の在りし日

思い出されり   台北の101から

見る夜景

宝石の街に光流れる     

   稀勢の里手負いの賜杯に男泣き
我も涙止めやらず 飛行機で荷物を降ろしてくれしひと
サンキューといえば「ドウイタシマシテ」と     台湾で座席譲りの連鎖反応
譲った人がまた譲られる   日本語で話しかけられ中国語
咄嗟に出たが後は続かず         真央のあと新葉と舞依が引き継いで
平昌の夢銀盤に描く        外川町路地を下りてその先の
紺碧の海に歓声あげる   切符売る乙女の車掌まぶしけり
老女のなかに一輪の花 
 龍虎塔遊園地のような
  お寺なり
龍の口より入りて
  虎から出づ 空の青
キャベツの緑に
溶け込んで
銚子電鉄外川へ向かう

      

茨城の名を押し上げし稀勢の里
竜と牛との取り組みもあり    外国(とつくに)の孫の手紙に
漢字増え写真と共に
成長嬉し    弟よ泣き虫なりしが祖父(じじ)
となり
四人の孫看て実家を守る    台湾では必ず席を譲られる
嬉しくもあり嬉しくもなし         台湾から帰国のタクシーにて
娘アブダビにいるという運転手    陶器の花瓶のような曲線美
シンガポール航空CAにしばし見とれる      
 年重ね帰らぬ日々が
     なつかしい
 娘四十路に
   我は七十路 台湾の原住民の
  お守りとふ腕輪
娘とお揃ひで買ふ


    

    

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